樹木葬のアンカレッジ代表の
「これからのお墓ガイド」

樹木葬とは

近年、「樹木葬」と呼ばれるお墓がつくられるようになり(かく言う弊社も樹木葬の企画・販売をさせていただいている会社なのですが)、テレビや雑誌などでも「現代のライフスタイルにマッチする」と注目を集めています。ある消費者全国実態調査によると、2017年に各種のお墓・納骨堂を購入した方のうち、4人に1人が樹木葬を選んだとのこと。これは、納骨堂の購入者数を上回る件数です。
樹木葬とはいったいどのようなものなのでしょうか? 本稿では樹木葬について、私が普段「終活セミナー」で講師としてお話させていただいている内容の一部を、できるだけわかりやすい表現でご紹介したいと思います。

 

 

●樹木葬の定義

実は、樹木葬の定義に「これ」という明確なものはありません。現代樹木葬の始まりとなった岩手県の寺院には、樹木葬に込めた特別な定義があろうかとは思いますが、一般に使われている樹木葬の定義は曖昧です。
強いて言えば、「花や緑の中に眠るイメージのお墓」ということくらいでしょうか。以下、主に従来型のお墓と比較した場合の樹木葬の特徴について、世間的なイメージも踏まえながら、少し解説させていただきます。

 

(1) 自然に還る?

樹木葬は、世間一般的には「自然に還る」というイメージが強いのではないでしょうか。確かにお墓の承継者がいなくても、合祀墓や樹木の下で、ほぼ永久的に「眠りにつける」タイプのものが多いようです。ただ、イメージを壊してしまうようで恐縮ですが、火葬場で高温で焼き固められたご遺骨は、実は簡単には土に還りませんし、樹木の栄養分にもなりません。「自然に還る」というのは、あくまでも概念的なものであって、科学的な話ではありません。

 

(2) 比較的安価?

従来のお墓では、「〇〇家先祖代々の墓」などと書かれた比較的大きな墓石を前提とするため、石代がお墓の総額を高める傾向にありました。樹木葬では、墓石は不要もしくは比較的小さなものに限られるため、その分価格が抑えられると言えます。
さらに、樹木葬は従来のお墓に比べて敷地が小さくて済む傾向にあるため、その点でも価格が抑えられます。ただし、ひとつのお墓を大人数で利用する場合には、ひとりあたりの価格、という点でみると、従来型のお墓の方が安くなる場合もありますのでご注意ください。

 

(3) 承継者を必要としない?

従来のお墓は、お祖父さんからお父さんへ、お父さんからその長男へと、男系家族によって引き継がれていくことが当たり前と考えられてきました。しかし、少子化や核家族化といったライフスタイルの変化と、「⼦供に⾯倒を掛けたくない」といった価値観の変化から、あえて親族にお墓を承継してもらわなくても良いと考える方が増えてきました。
樹木葬は、承継者が承継することを前提としないスタイルが大半ですが、承継者がいれば、承継していくことが可能な樹木葬墓もあります。言い換えると末代の子孫も同じ場所に収まることが可能なタイプです。

 

(4) 立地が不便?

「樹木の下で眠る」というコンセプトのため、広い土地のある交通の不便な場所にしかない、というイメージをお持ちの方もいらっしゃるようですが、そんなことはありません。手前味噌になってしまい恐縮ですが、弊社の手掛ける樹木葬は、都営大江戸線「牛込柳町駅」から徒歩1分の牛込庭苑(東京都新宿区)をはじめ、交通アクセスの良い立地のものが大半です。

 

 

樹木葬の歴史

「樹木葬」という名称を冠した日本初のお墓は、1999年に岩手県一関市の祥雲寺によって栗駒山につくられたものが始まりです。里山の緑化再生を願い、ご遺骨のそばに植樹が行われました。
その後、横浜市(2006年)および東京都(2012年)が公営墓地に樹林型墓地を導入したことで、樹木葬が都市部に拡大。民間墓地では、東京都港区の道往寺(2013年)が庭園型・個別埋葬タイプの樹木葬「高輪庭苑」を開苑したのを皮切りに、様々なタイプの樹木葬がつくられるようになり、購入者数が年々増加。ポータルサイト「いいお墓」を運営する鎌倉新書の集計によると、2018年2月には、納骨堂の購入者数を上回るほどの伸びを見せています。

 

樹木葬の環境

様々なタイプがありますが、大きく以下3つに分類できると考えています。

(1) 里山型:人里離れた山中にて、里山の維持や再生を謳い、埋葬と植樹を併せて行うタイプの樹木葬です。(例:祥雲寺ほか)

(2) 霊園型:主に都市郊外の比較的広い霊園で、緑に囲まれて眠るタイプの樹木葬です。(例:東京都立小平霊園樹林墓地ほか)

(3) 寺院境内型:寺院の境内(敷地内)の庭園のようなスペースで、花や緑に囲まれて眠るタイプの樹木葬です。(例:久が原庭苑ほか)

 

 

樹木葬選びのポイント①「ご遺骨の収め方」

ご遺骨の収め方ひとつとっても、場所によってやり方は様々。いくつかの視点に分けて、以下に解説します。

 

(1) 埋葬か散骨か

「樹木葬=樹木のまわりにご遺骨を撒く」というイメージをお持ちの方もいらっしゃるようですが、一般的に樹木葬は、ご遺骨を墓地の土の中に”埋める”ことを指し、地表に”撒く”という行為とは一線を画します。「墓地、埋葬等に関する法律」で、日本では許可を得た墓地以外にご遺骨の埋めることは禁止されています。ご遺骨を”撒く”という行為について許可制度はありませんが、そのやり様によっては、刑法の「遺骨遺棄罪」に抵触することも考えられますし、条例で禁止をしている市町村もあります。
一方で、地上での散骨が公認されている希少な場所があります。島根県海士町にあるカズラ島です。ここでは行政・住人・企業が一体となり、地域おこしの一環として陸上散骨を推進しています。

 

(2) 骨壺、骨袋、そのまま

埋葬する時のご遺骨の「容れもの」も様々です。火葬場で焼骨された時に収められた陶製の骨壺に入ったまま埋葬するタイプや、骨袋に移し替えて埋葬するタイプ、さらには特に容れものに包むことなく、そのまま土にお還しするタイプもあります。土に溶けやすい素材の骨壺や骨袋を提供するケースも出てきているようです。

 

(3) 合葬、集合埋葬、個別埋葬

埋葬するときのご遺骨同士の関係性にも様々な形があります。以下3種類に大別されます。

 

    1. ① 合葬:骨壺からご遺骨を取り出し、他人のご遺骨と混在する形で埋葬する方法です。

 

    1. ② 集合埋葬:ご遺骨をひとつの大きなスペースに埋葬します。ご遺骨は骨壺や骨袋などに入った状態ですので、他人のご遺骨と一緒にはなりません。

 

    1. ③ 個別埋葬:ご遺骨を骨壺や骨袋などに入れ、個々の区画に埋葬します。それぞれの墓標に向かって個人毎・家族毎にお参りできるのが特徴です。樹木を墓標にする場合と、故人のお名前や生没年月日などを彫刻した墓石や銘板を墓標とする場合があります。弊社の樹木葬も、亡くなった後一定期間、個別に埋葬する形を取っています。

 

 

 

また、ご遺骨を埋葬する際に遺族が立ち会うことのできない墓地もあります。

 

(4) パウダー加工

火葬場で焼いたご遺骨をそのまま埋蔵するタイプと、粉状に加工(=パウダー加工)した上で埋蔵するタイプがあります。加工することによって、区画面積が小さくなり費用が抑えられる、手元供養と相性がいい、土に還りやすい等の理由により、年々利用が広がっています。

 

 

樹木葬選びのポイント②「経営主体と運営方針」

樹木葬の経営は、従来のお墓同様、地方自治体、宗教法人、公益法人にのみ運営が認められており、行政から許可を得た場所でなければ敷設できません。当然、運営主体によって樹木葬の供養や管理の方針が異なってきます(詳しくは、「
公営墓地と民営墓地(および寺院墓地)について」をご一読ください)。

公営墓地では、原則として地域住民であれば宗教不問で誰でも受入れ、他の事業主体に比べ各種の費用が安価であることが特徴です。宗教的な義務がない代わりに、承継者が途絶えると、無縁という扱いにならざるを得ないことを寂しく感じる方も少なくありません。

いわゆる民営墓地(寺院墓地除く)では、多くは宗教不問で利用可能で、居住地の縛りもありません。
寺院墓地では、購入者は原則としてお寺の宗派に帰依する必要があり、お寺を支える檀家としての様々な義務があります。しかし、永代供養を約束している寺院墓地では、家族内の承継者が途絶えたのちも供養が絶えないという安心感を感じる方もいらっしゃいます。

最近は、寺院内の墓地であっても、宗教宗派不問で、檀家にならなくてもOK、という形で購入する方の自由度を高めるところも出てきています。

運営主体がどこか、供養や管理の方針がどうなっているかは、樹木葬選びにおける最も重要なチェックポイントのひとつといえるでしょう。

 

 

樹木葬選びのポイント③「費用」

ひとくちに費用といっても、すべてを単純に積算すればよいものではなく、タイミングによって必要となるものが異なってきます。以下3つの観点から整理して検討することをお勧めします。

 

(1) 始めにかかる費用

 

    • 永代使用料:
      墓地代にあたる永代使用料は、地価による価格の影響を受けます。埋葬スペースの小さい樹木葬であっても、都心の一等地や、交通アクセスの良い場所は使用料が高くなる傾向にあります。
      また、埋葬方法によっても費用感は異なります。個別埋葬タイプの場合は、個別のスペースを確保する必要があるため、従来型のお墓ほどではありませんが、それなりに使用料がかかります。一方でご遺骨を骨壺から取り出して他人の遺骨と一緒に埋葬する合祀タイプは、比較的安価に利用することができます。

 

    • 墓標代:
      なんらかの形でお名前などを残す墓標や銘板などを設置する際は、その代金が必要な場合があります。

 

  • 彫刻代:
    墓碑にお名前等を彫刻するタイプの場合に必要となります。

 

(2) 毎年かかる費用

 

  • 年間管理料:
    承継者を必要としないという性格上、かからないこともありますが、墓地の維持管理を手当てするため、「生前の間のみ」という形で徴収される場合もあります。
    数年分まとめて前納できる場合もあります。

 

(3) 納骨時にかかる費用

 

  • 埋葬料:
    ご遺骨を粉状にする場合、粉骨手数料や骨壺・骨袋代が加わる場合があります。

 

 

樹木葬選びのポイント④「立地」

お墓選びにおいて、最も多くの人が重視するポイントとしてあげるのが立地です。ご本人の希望はもちろん、残された方がお参りしやすく管理しやすいように、というのも理由にあります。近年、故郷にある先祖代々のお墓を「墓じまい」して、ご自宅からの交通アクセスの良い樹木葬や納骨堂などを利用し始める方が増えているようです。弊社のお客様にも、お父様のご遺志により千葉県南房総市にある先祖代々のお墓を引き払って港区高輪の樹木葬墓を購入された方(詳しくはこちら)など、立地を理由に改葬した方が数多くいらっしゃいます。

 

 

最後に

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。ひとくちに樹木葬といっても、様々なタイプがあることがお分かりいただけたのではないかと思います。「思っていたのと少し違う」という感想をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
改めて申し上げたいのは、お墓の選択肢として樹木葬をお考えいただくにあたって、後々後悔しないために、是非ひとつひとつ丁寧に見ていただきたいということです。きちんと販売しているところであれば、インターネットで情報を出していますし、資料請求にも応じてくれます。しっかり見比べていただき、最後は現地まで見学に行って、ご自身の目で確かめていただくことが肝心です。余裕をもってご検討いただき、納得感のあるお墓選びをしていただくことを願っています。

 

伊藤照男

伊藤照男 株式会社アンカレッジ代表取締役

2012年、浄土宗僧侶の創設した寺院支援の会社・株式会社アンカレッジに参画。
マーケティング視点から、供養を求める人、供養のための空間に着目し、支持を集める。お墓や寺院に関連する法律と行政にも精通。生活者・寺院、それぞれを対象としたセミナーを定期的に開催し、人気を博している。
1975年、北海道北見市生まれ。俳優の鈴木亮平氏に似ていると言われ、気を良くしている。

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