樹木葬のアンカレッジ代表の
「これからのお墓ガイド」

公営墓地と民営墓地(および寺院墓地)について

読者の皆さま、こんにちは。早速ですが、「公営墓地」「民営墓地」さらには「寺院墓地」などの言葉を聞いたことはありますか?実はこれ、墓地を経営主体から見たときの分類なんです。墓地の経営主体にはどんなものがあるのか、それぞれどのような特徴があるのか、ご紹介したいと思います。


 

墓地の経営主体

日本国内における墓地は、「墓地、埋葬等に関する法律(昭和23年制定、通称「墓埋法」)」によって、都道府県知事の許可を受けた区域として定められており(現在は市長と特別区の区長に権限が委譲されています)、墓地の経営にも行政の許可が必要と定められています。また、国民の宗教的感情、公衆衛生および公共の福祉の観点から、認定された墓地以外の区域に遺体や遺骨を収めることは同法律によって禁止されています。
一方で、墓地が簡単に廃業してしまったり、一部のお金持ちしか入れないということになってしまうと困るため、永続性と公益性の観点から、墓地の経営主体は原則として市町村等の地方公共団体、もしくは宗教法人、公益法人に限定されるようになりました(厚生労働省通達「墓地経営・管理の指針等について(平成12年12月6日生衛発第1764号)」より)。
これらのうち地方公共団体が経営する墓地が「公営墓地」、それ以外のものが「民営墓地」と呼ばれています。
ただし上記以外にも、戦後しばらくの間は経営許可が下りていた、株式会社が経営する墓地があり、さらに「墓埋法」が制定される前に設置された、村落の住民が共同で管理運営する墓地や、個人が自己所有地内に設ける墓地もあります。これらの墓地は新設することはできなくなりましたが、多数現存しています。

 

公営墓地

全国で約3万か所存在する公営墓地。地方公共団体(市町村等)ならではの特徴がいくつかあります。
ひとつは、一部例外もありますが、基本的には地域住民にのみ門戸を開放していること。

また、民営墓地に比べて、価格が低く抑えられる傾向にあることも特徴です。一方で、都市部において、用意された区画数に比べて応募者数が大きく上回る傾向にあり、高倍率の抽選を勝ち抜いた一部の人だけが利用できる状態が長く続いています。
さらに、宗教的な縛りは一切ありません。当然、管理者が宗教的な供養を行ってくれることもありません。

 

民営墓地

地方公共団体「以外」が経営する墓地全般を指します。宗教法人が経営する墓地が約5万7千か所に対して、公益法人を含めた「民法法人」が経営する墓地は約500か所と、多くありません。公益法人の経営する墓地として有名なものに、冨士霊園などがあります。

 

寺院墓地

墓地を経営する宗教法人のほとんどが仏教系、すなわち寺院であり、寺院の経営する墓地を、寺院墓地と呼んでいます。寺院墓地は、そのお寺の檀信徒にのみ使用が認められているのが一般的です。これには、江戸時代、すべての者がいずれかの寺院に属するという寺請制度にもとづき、各寺院の墓地には自寺院の檀信徒のみが埋葬されてきた、という歴史的背景と、信教の自由により、寺院が墓地の使用を自寺院の檀信徒のみに限定することは、宗教活動の一環として認められていると考えられます。
墓地の利用者は、檀信徒として寺院に帰依し、金銭面も含めた様々な形で寺院を支える立場になります。寺院は檀信徒に支えられながら、彼らの先祖の供養を含めた様々な宗教活動を行っていくわけです。
他方で、寺院が経営主体でありながらも、「檀信徒以外の人も受け入れます」という方針で運営する墓地も多数存在しています。

 

 

墓地の「名義貸し」にご注意

最後に墓地の「名義貸し」について触れさせていただきます。前述の厚生労働省通達で言及されていますので、少し長いですが以下引用します。

 

『いわゆる「名義貸し」が行われていないこと。』

特に宗教法人の墓地経営を許可する場合には、宗教法人の名を借りて実質的に経営の実権を営利企業が握るいわゆる「名義貸し」の防止に留意することが必要である。
この「名義貸し」については、その実態はなかなか究明できない場合もあり、何をもって具体的に、「名義貸し」というのかは難しいが、問題となる事例としては例えば次のような場合が考えられる。先ず寺院(宗教法人)に対して石材店等の営利企業(仮にA社とする。)が墓地経営の話を持ちかけ、この寺院はA社より資金その他について全面的なバックアップを得て墓地経営の許可を受ける。ところが当の寺院は墓地販売権を始めとした墓地経営については実質的に関与しない取り決めがA社との間で交わされている。そしてA社は墓地使用権とともに墓石を販売して多大な収益を得るが、これは一部を除いて寺院の収入とはならない。しかしながら、使用者とのトラブルについては、最終的な責任者は寺院にあるとしてA社は責任を回避する。そして、運営の安定性を欠いたままで、後には資金力のない寺院と墓地だけが残る、といったような事例である。
こうした事例でもっとも被害が及ぶのは墓地利用者である。このような事態を防ぐことが行政の役割であり、このため、宗教法人担当当局と連絡をとりながら、実際に当該宗教法人が墓地経営を行う事ができるかを充分に精査する必要がある。また、宗教法人の側も、自らが墓地経営の主体であることを十分に認識して事業に着手することが重要である。

 

「何をもって具体的に、「名義貸し」というのかは難しい」と断り書きは入っていますが、ここでのポイントは、「お寺が実質的に経営に関与しておらず、責任を取る(取れる)構造になっていないことが問題だ」ということであろうと思います。ひと昔前に比べると、こうした問題のある墓地は少なくなったといわれていますが、何かあった時に被害を被るのは使用者です。お墓を購入する際には、事前にそのお寺の住職に会って話を聞いてみるなど、このような問題がないか、できる限り確認することをお勧めいたします。

伊藤照男

伊藤照男 株式会社アンカレッジ代表取締役

2012年、浄土宗僧侶の創設した寺院支援の会社・株式会社アンカレッジに参画。
マーケティング視点から、供養を求める人、供養のための空間に着目し、支持を集める。お墓や寺院に関連する法律と行政にも精通。生活者・寺院、それぞれを対象としたセミナーを定期的に開催し、人気を博している。
1975年、北海道北見市生まれ。俳優の鈴木亮平氏に似ていると言われ、気を良くしている。

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