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死後事務委任とは?
おひとりさまの終活の心強い味方!

死後事務委任とは?おひとりさまの終活の心強い味方

目次

1.死後事務委任とは

死後事務委任は民法上の委任契約の一種で、本人が亡くなった後に、死亡届の提出や葬儀の手配、公共料金や年金などの諸手続きを、本人に代わって行うことを約束する契約です。死後事務委任契約を交わすことによって、本来は相続者でないと行えない死後事務を、相続者以外が行えるようになります。

通常、民法では、委任契約の委任者が死亡した場合には委任契約は終了するとされていますが、委任者が受任者との間で交わした自己の死後の事務を含めた法律行為などの委任契約については、当事者の合意があれば委任者が死亡した後も効力が続くとされています。

生涯未婚者や子どもの居ない夫婦の増加に伴い、いわゆる “おひとり様” が増えていることで、自分の死後の手続きを任せられる相手がいないことに不安を感じる方の声が聞かれるようになりました。
死後事務委任契約は、そういった方々を中心に、利用が今後拡大すると予想されます。

1-1.依頼できる相手

親戚や友人・知人

親類はもちろん、血縁関係のない方であっても受任者になれます。
ただし、委任する内容によっては相続人や後見人でないと行えない場合もある為、依頼する内容には注意が必要です。

弁護士や司法書士、行政書士

委任する内容によっては遺言書や任意後見契約も結ぶ必要があり、そういった関連する契約も一括で相談できます。
専門家である点で安心できる委任先ですが、その分、親戚や知人に依頼するのに比べて費用もかかると思っておく必要があります。

NPO法人や民間会社

営利・非営利を問わず、死後事務委任契約を請け負う法人も増えています。弁護士などに依頼するのと同様、依頼するにあたりそれなりの費用が必要です。

社会福祉協議会

社会福祉協議会は、地域福祉の推進を図ることを目的とし各市町村に設置されています。福祉・介護サービス事業、障害者など要援護者の生活相談事業も行うほか、死後事務委任も請け負ってもらえますが、一定の条件があります。

1-2.依頼できること

死後に必要になる手続きというのは、近親者を亡くしたことがある方でないとあまり想像がつかないかもしれませんが、大まかに挙げるだけでも下記のようなものがあります。これらのことを、死後事務委任契約を結ぶことによって(※1)自分の死後に行ってもらうことができます。

(※1)内容によっては、死後事務委任契約だけではなく遺言状や任意後見契約書の作成が必要になるものもあります。

葬儀に関するもの

遺体の引き取り、葬儀の手配、火葬と埋葬

行政手続きに関するもの

死亡届の提出、運転免許証や健康保険証の返還、年金の受給資格の抹消、固定資産税等税金の支払い

▶ 生活に関するもの

病院・介護施設料金の精算、住居契約の解除や明渡し、水道光熱費等公共料金・携帯電話等の支払いと解約、指定された方への訃報連絡、遺品整理、SNS等のアカウント削除

残されたペットの世話

ペットの引き取り手探し、あるいは引き取りをお願いしている方への引き渡し

1-3.依頼できないこと

▶ 相続や身分関係に関する事項はできない

遺産をどのような割合で分けるか(相続分の指定)、遺産をどのような方法で分けるか(遺産分割方法の指定)といった相続に関する事項、遺言執行者の指定などの身分関係に関する事項については、遺言書で指定しておく必要があります。

これに関連して、銀行口座の解約と預金の払い戻し手続きも、死後事務委任契約だけでは受任者は行うことができません。死後事務の受任者が遺言書で遺言執行者として指定されることで、本来相続人が可能な預金の払い戻しを受けることができます。
(参考:後述の「死後事務委任と遺言状の違い」)

生前に発生する手続きはできない

死後事務委任契約は、依頼者の死後に行う内容を委任するものであるため、生前の財産管理や身の回りのことについては委任することができません。別途、財産管理契約や見守り契約、判断能力が低下した本人のために契約締結などを支援する後見制度などの併用を検討する必要があります。
(参考:後述の「成年後見人は死後事務をできないのか」)

死後事務委任で依頼できることとできないこと

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2.死後事務委任を検討すべき人

次のような方は、死後事務委任の検討をした方が安心です。

▶ おひとり様、身寄りのない方

この場合の “おひとり様” は、未婚の方だけでなく、既婚で伴侶に先立たれた方も該当します。

▶ 相続者以外の方に死後事務をお願いしたい方

内縁のパートナーがいらっしゃり、パートナーに諸手続きをお願いしたい場合にもこれにあたります。

「遠方に住む高齢の親族に負担をかけたくない」や「疎遠な親族の世話になりたくない(迷惑をかけたくない)」と思う方

疎遠な方に負担をかけることへの心理的な申し訳なさはもちろん、交流の少ない親族の場合は事前に自分の希望を伝えておくのが難しく、望む通りの対応をしてもらえない懸念もあります。

▶ 家族や親族が高齢の方しかいない方

事後の諸手続きをお願いしようと思っていた相手が、先に亡くなる場合に備える必要があります。

・・・
身寄りのない方が亡くなり、遺体の引き取り手が見つからなかった場合、ご遺体は最終的に自治体によって最低限の火葬と埋葬はしてもらえます(おひとりさま、単身者の死後のこと 参照)。しかし、葬儀や希望するお墓への納骨、またそれ以外の死後事務手続きを自治体がしてくれることはありません。

その為、いわゆる “おひとり様” である未婚の方や、離婚あるいは伴侶と死別された後に頼れる親族がいない方の場合は特に、生前中に死後事務委任契約を行う必要があります。

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3.死後事務委任と遺言状、成年後見人との関係

3-1.死後事務委任と遺言状の違い

死後のことに関する意思表示の方法として多くの方が真っ先に思いつくのは「遺言書」だと思います。
しかし、遺言書で決めておける範囲は民法で定められており、相続に関する事項や遺言執行者の指定などの身分関係に関する事項に限定されています。それ以外の事柄を記載しても、法的な拘束力はありません。

それに対し、死後事務委任契約では遺言書では定められない様々な事務を決めておくことができ、その内容は非常に広範で自由度高く決めておけます。

遺言書で定めておける内容の例

なお、法人を受任者として死後事務委任契約を結ぶ際には、受任者から遺言書の作成を求められる場合があります。それは、死後事務の委任内容に遺産整理も含んでいた場合に、その手続きを円滑に進められるようにする為です。親族がいない方が依頼者であった場合はもちろん、依頼者に本来相続人となるべき親族がいた場合にも、相続者の介入を退けることができます。
また、遺産清算方式(※2)の死後事務委任を結ぶ際にも、遺言書の作成が必要となります。

(※2)委任者の逝去後の遺産から死後事務の費用を清算する方式。預託金を事前に預ける必要がないというメリットがあります。

3-1.成年後見人は死後事務をできないのか

生前の財産管理等は成年後見人にお願いしていたとしても、成年後見人との契約は本人の死亡によって喪失する為、基本的には成年後見人が死後事務を行うことはできません。
一部死後事務については必要に応じて成年後見人が行えるように民法で定められてはいますが、その権限はごく限定的です。

例えば葬儀や埋葬に関することでいえば、概ね下記のような取り扱いになるようです。

〔成年後見人ができること〕
・遺体引取りや火葬等のための葬儀業者等との契約の締結
・直葬や火葬式に関する契約

〔成年後見人ではできないこと〕
・葬儀(通夜や告別式等の宗教儀式を伴うもの)
・永代供養に関する契約(少額かつ簡易なものであれば許可される可能性もある)

あくまでもケースバイケースではありますが、いずれにせよ家裁の判断を仰ぐ必要があり、煩雑であることは明らかです。
相続者となる身寄りが居ない方であれば、生前のうちに死後事務委任をお願いしておく方が望ましいでしょう。

逆にいうと、死後事務委任契約の受任者は、生前の財産管理や身の回りのことについては請け負うことができません。生前の(例えば認知症になってしまった場合などの)財産管理についても不安がある場合は、死後事務委任だけではなく、財産管理契約や後見制度などの併用を検討する必要があります。

また、死亡届の役所への提出は、親族もしくは家屋(土地)管理人、あるいは後見人、保佐人、補助人、任意後見人または任意後見受任者などに限られている為、死後事務委任の受任者がその立場にない場合には、死後事務委任の受任者とは任意後見契約も結ぶ必要が出てきます。

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4.死後事務委任契約にかかる費用

死後事務委任の契約内容(どういった死後事務を任せられるか)に特段の定めはありません。基本的には、委任者の希望する事項と受任者が対応できる内容とを擦り合わせ、請け負う内容を決めて契約書に組み込む形になります。

費用は誰に何を依頼するかによって大きく変わってきますが、例えば法人と委任契約を交わす場合には、依頼する内容に基づいて、その法人が定めた費用体系に従うことになります。

概ね ①契約時にかかる費用 ②死後にかかる費用、の2つに分かれ、内容や件数によって加算されていきます。
また、任意後見契約も併せて結び、生前の財産管理も依頼した場合には、それに対する継続的な報酬の支払いも発生します。
個々人の希望内容によって大幅に変わる為、①②を合わせた総額としてのいわゆる “相場” というものはあまり参考になりませんが、
最低でも50万円、概ね100万円~150万円はかかると思った方が良いでしょう。もちろん、依頼内容によってはそれ以上の費用がかかる可能性もあります。
死後事務委任の費用の目安

4-1.契約時にかかる費用(専門家や法人に依頼する場合の例)

死後事務執行に必要な効力を持つ書類の作成費用が主になります。

下記費用でそれぞれ1件ごとに数万円~が加算され、初期費用として最低20万円~は見積もっておく必要があります。

 

  • ・公正証書遺言原案作成費用
  • ・死後事務委任契約書原案作成費用
  • ・任意後見契約書原案作成費用
  • ・公正役場への支払い費用
  • ・事務手数料
  • ・保証料

4-2.死後にかかる費用(専門家や法人に依頼する場合の例)

実際に死後事務を執行する為の費用が主になります。

下記費用でそれぞれ1件ごとに数千円~が設定され、依頼する内容によって加算されていきます。
また、遺品整理等の内容に個人差の大きいものに関しては、事前に見積もりを行うか、実費請求となることがあります。

 

  • ・死亡時の病院等での遺体引取り
  • ・葬儀社との打ち合わせ・喪主の代行
  • ・埋葬・納骨の代行
  • ・指定された方への訃報連絡
  • ・病院や介護施設等の費用の清算
  • ・役所等への届出
  • ・居契約の解除や明渡し

その他、
携帯電話等の解約手続き、公共料金等の清算と解約手続きetc.

4-3.遺産清算方式と預託金清算方式

死後にかかる費用の支払い方法として、遺産清算方式と預託金清算方式があります。どちらの方式を選べるかは、依頼する先によってことなりますが、法人に依頼する場合は、いずれかを選べる場合もあります。

遺産精算方式

遺言書を作成し遺産整理も併せて任せることで、遺産の中から死後事務に必要な費用を充てて貰える仕組みです。初期費用が抑えられるほか、死後事務を委託した法人との契約を中途解約する場合のトラブル防止にもなります。

預託金清算方式

死後事務に必要な費用を予め受任者に預け、委任者の死後はその預託金によって死後事務の費用を清算します。死後事務に必要となる費用については委任者自身で管理し残しておく必要がある為、財産管理に不安がある場合や、必要経費は予め支払っておきたいという方にはこちらが合っています。

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5.死後事務委任契約をする際の注意点

契約をしてから実際に事務を行うまでの間にタイムラグがある為、死後事務委任契約を結ぶ際には、いくつか注意点があります。
死後事務委任契約は個人と交わすこともできますが、ここでは主に「受任者=法人」として説明していきます。

5-1.受託者の倒産などによる事業停止

契約の後に実際に亡くなるまでの間に、受任者(運営法人等)が事業を終了する可能性があります。
2016年、身元保証や日常生活支援に加え、葬祭手配などの死後事務を行っていた「公益財団法人日本ライフ協会」が、不正契約や不正資金流用などで不祥事を起こし、倒産しました。

利用者が契約時に支払った費用の一部は葬祭手配(死後事務)の為の「預託金」という形で財団へ預けているものでした。死後事務を実施できない以上、本来であれば倒産時に預託金は利用者へ返還されるべきものであるはずが、不正契約により預託金が適切に扱われていなかったこと、また不正資金流用があったことで、預託金の返還がされず大きな問題となりました。

「公益財団法人」という一見信頼性のある団体でさえこのような例となるうることを考えれば、いずれの法人に委託しても100%安心とはいえませんが、少なくとも信用に足る相手が否かを見定めずに容易に契約を結ぶのは避けなくてはいけません。

5-2.中途解約時の預託金返還トラブル

世の中のサービスの向上や新サービスの誕生は年々目覚ましいものがあります。死後事務委任を請け負う法人も恐らく例に漏れず、今後様々なサービス形態や付加価値を備えたものが提供されると予想されます。
既にどこかの法人と死後事務委任契約を結び預託金を預けている方が、別の法人と事後事務委任を結び直したい(あるいは単純に契約を解約したい)と思った際には、当然その預託金は返還されるべきです。

返金についての取り決めを契約時に必ず確認しておき、もしも返還に難色を示された際には消費生活センターなどに相談できるように備えておくことが必要です。

また、法人によっては、預託金清算方式ではなく遺産清算方式を採っていることもあります。遺産精算方式とは、遺言書を作成し遺産整理も併せて任せることで、遺産の中から死後事務に必要な費用を充てて貰える仕組みです。
預託金を預けることに不安がある方は、そういった法人も検討してみるのも良いかもしれません。

5-3.遺言書との干渉

遺言書と死後事務委任とでそれぞれに財産整理に関係する記載があり、その内容に相違があった場合、どちらを優先すべきかの問題が発生します。

また、遺言書が効力を発揮する為には厳格な様式が定められている一方で、死後事務委任契約は方式が決められておらず、口頭でも成立します。そのような齟齬が出やすい状況であるにも関わらず、遺言書と死後事務委任契約のどちらがどの程度優先されるべきかの基準は決められていません。

5-4.親族の希望との衝突

死後事務委任の利用者には、身寄りのない方が比較的多いとは推測されますが、「親族に負担をかけたくない」「親族とは疎遠な為に希望を伝えづらい」といった、相続人がいながらも他者に死後事務を任せたいと希望する場合もあります。

しかし、相続人が存在する場合には、死後事務委任契約の委任者としての地位も相続人が引き継ぐことになります。つまり、相続人が死後事務委任契約を解除できる可能性があるということです。
自分の死後、受任者と親族との間でトラブルにならないように、出来るだけ親族の意思も確認しておく必要があります。

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死後事務は親族でも請け負うことが出来るものである一方で、相続人の干渉の懸念や、遺言書の内容と齟齬が無いようにしたりと、その内容によっては専門的知識に基づいて慎重に取り交わす必要があります。

アンカレッジでは2023年に(一社)ハッピーエンディング協会 と提携し、存命中に必要となる任意後見契約、財産管理委任契約や、死後に有効となる遺言書作成、死後事務委任契約など、終活全般のフォローができる体制を整えています(2024年3月時点で関東エリア限定)。
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