樹木葬Blog

樹木葬プランナーがお墓と
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アンカレッジ社内植栽講習会

  目次

1.植栽を知り、魅力を活かすための講習会

アンカレッジのつくる樹木葬は、庭園型樹木葬(参考:樹木葬とは?メリット・デメリット、よくある誤解についても解説!)の中でも特に植栽の美しさを重視しています。
ご見学の方、実際に契約された方々にも褒めていただくことが多く、スタッフとしても誇りをもってご案内しています。

樹木葬のご案内ページでもお伝えしている通り、アンカレッジの樹木葬の庭苑は、世界的に実力が認められている庭園デザイナーである石原和幸さんに監修していただいています。

でも植物は植えて終わりではなく、日々成長し(あるいはうっかりすると枯れてしまったり…)変化するもの。
アンカレッジの樹木葬が美しさを保てるのは、協力業者による助力に加え、お寺の方やスタッフの日々の手入れの賜物でもある…ということをちょっと自画自賛させていただきます。

とはいえ、日常的に作業をする寺族やスタッフは植栽のプロではなく、戸惑いながら手探りで手入れをしている部分も多々あり…

そこで、アンカレッジの樹木葬、そして植栽への理解を深めより良い庭苑とする為、2024年7月の某日に、スタッフを集めての植栽講習会を実施しました。

実際に造園に関わってくださっている株式会社石原和幸デザイン研究所(以下、石原デザイン)の久保田裕蔵さんを講師に迎えて、座学と実地での研修を行い、アンカレッジの樹木葬の植栽にはどのような特徴があるのか、庭の手入れのポイントなどを伺いました。

ここで備忘を兼ねて内容を共有することで、多くの方に
「アンカレッジの樹木葬の植栽のポイント」と
「アンカレッジの樹木葬は手入れによって魅力を増す、生きているお墓である」
ということを知っていただけたら幸いです。

 

アンカレッジ社内植栽講習会の様子

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2.アンカレッジの樹木葬の植栽

ガーデニングを嗜んでおられる方には「他の樹木葬とは違う」と言わしめることもあるアンカレッジの樹木葬ですが、実はスタッフのほとんどは庭いじりの素人。石原デザイン監修の庭苑が他の樹木葬と比べて何がどう違うのか、具体的に分かっていなかったりします…
改めて、石原デザインの樹木葬庭苑の拘りを伺ってみました。

2-1.立体感のある配置と配色

木の高さに段階をつける

木の高さは成長によって変化しますが、それとは別で、樹種によってある程度高さが決まってきます。
造園の際には、高木・中木・低木をそれぞれ配置することで、全体の立体感を出しているそうです。

色味の違いをつける

葉色の美しさを楽しめるモミジを多用するのも石原デザインの特徴です。
モミジにも多くの種類があり、春の新芽が既に赤い種類などもあります。
そういった色味の違いをバランス良く取り入れるのも立体感を持たせる技なのだとか。

4月の新葉が赤いモミジ

4月の新葉が赤いモミジ

木の持つ雰囲気や特性を活かす

木には秋~冬にかけて葉がなくなる落葉樹と、葉が落ちてもすぐに次の葉をつける常緑樹があります。
常緑樹は冬の寒さに耐えるため、葉がやや固く光沢が強い傾向にあるとか。その分、常緑樹は見た目の雰囲気も固くなりがち。

樹木葬を作る際には、暖かい雰囲気の庭苑にするために落葉樹を多めに配置したうえで、冬場にも緑が絶えないように常緑樹も組み合わせて入れています。

成長の早い木は使わない

アンカレッジの樹木葬は、小規模なものだと50㎡ほどの小さな庭苑です。
成長が早い木は景観を崩し手に負えなくなる懸念があるので、避けているそうです。

2-2.多年草と一年草のバランス良い配置:花を絶やさない

墓石周りを彩ってくれる花苗にも、一年草や多年草といったそれぞれのライフサイクルがあります。
アンカレッジの樹木葬では、花のライフサイクルも考慮したうえで、冬でも花の彩りの溢れる景観の維持に努めています。

一年草

種を植えたら1年以内に開花します。
成長のスピードが早く、鮮やかな花を次々と楽しめます。
(例:パンジー、ビオラ、ニチニチソウ、マリーゴールドetc.)
 ↓↓↓
アンカレッジの樹木葬では:
墓石の周りに配置し、短期間でボリュームを出せるようにしています。
また、季節ごとの植え替えによって、一年を通して花が途切れない庭にすることができるほか、過度に成長して墓石が隠れることがないようにしています。

多年草

季節が変わっても枯れず、毎年花が咲きます。
年数を経るごとに成長し見栄えが良くなっていく楽しみがあります。
(例:クリスマスローズ、キンギョソウ、キキョウetc.)
 ↓↓↓
アンカレッジの樹木葬では:
墓石から少し離れた広いスペースに多年草を入れ、伸び伸びと育ち長く楽しめるようにしています。

※他に二年草、四季咲きなどもあります。

西陣庭苑の植栽のバランス

2-3.大事な脇役:セダム

セダムの一種のメキシコマンネングサ

セダムの一種のメキシコマンネングサ

地を這うように広がるセダムは、グランドカバーとして多くの庭苑で取り入れられています。
グランドカバーとは、「地面を覆う」というその名の通り、地表を覆うために植栽する植物のこと。
グランドカバーを取り入れることには、次のような利点があります。

1)地面を隠すことで美観を保つ
2)雑草が増えるのを防ぐ
3)土壌の保水や流失防止

セダムには500種以上あり、それぞれ好む環境が異なります。
試行錯誤の末、多くの庭苑で活躍しているのはメキシコマンネングサという種類ですが、実は環境が好み過ぎると想定以上に繁殖してしまいマメにカットしないといけなかったり… 一方であまり好まない環境で頑張ってくれているセダムもあり、セダムの生育状況の良不良に頭を悩ませるスタッフが結構います。

なお、同じグランドカバーとして「タマリュウ」という草や、「バークチップ」「マルチングバーク」といった細かくした木や樹皮を使用する場面も一般的に多く見られます。

タマリュウは濃緑で暗めの印象になることと、繁殖に時間がかかること、バークは木材である為に時間経過とともに土壌に吸収され、補充が必要となってくる(=コストがかかる)ことから、アンカレッジの樹木葬での導入は控えめです。

アンカレッジの樹木葬は「明るいお墓」がコンセプトの一つです。
グランドカバー選びにもコンセプトに則った工夫がされているんですね。

グランドカバーになるタマリュウとバーク

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3.スタッフが日常で行うお手入れのキモ

開苑直後の庭苑は、正直なところ若干の物足りなさを感じることも少なくありません。
作庭時点では、今後植栽が育つことを想定してゆったりとした間隔が設けられており、土の見える部分が多いことがその要因です(同様の理由で、季節ごとに一年草を植え替えた直後も少し植栽のボリュームは控えめです)。
作庭から2~3年が経過し、木々が根を張り枝葉を広げた頃に植栽全体の美しさは安定します。

庭苑は作って終わりではなく、その後の手入れによって完成されていきます。
その為に、日々お寺の方やスタッフはどのような手入れをすべきかも改めて教えていただきました。

3-1.雑草取り:実は根っこまで取らなくても良い!?

人為的に作った庭において、意図せず生えてくる植物は「雑草」です。
お参りの方にとって心地よい景観維持の為、基本的には故意に植えた草木以外は除去に努めています。
一方で、植えた植物が環境に上手く適応できず枯れてしまった時などには、周りの雑草たちが適度に緑を増やしてくれることが有難かったりもします…
ですので、植栽としての調和が取れていれば、雑草も必ずしも抜かなくても良いのでは、というのが今回の講習での見解です。
どの草花も本来は等しく生きており、雑草と決めつけるのは人間のエゴ…なんてしみじみ思ったり。

草取り豆知識

かつては「雑草は根っこから取らないとすぐにまた生えてくる」というのが常識になっていましたが、最近の認識ではそうでもないそう。
根を取った土が踏み固められると、土壌が固くなり、より頑強に根を張る雑草が出始めて悪循環になってしまうとか…
最近の新常識では、茎と根の境付近にある “生長点” をカットし、あえて土中に根を残す方が良いと考えられているそうです。
生長点がなくなれば新たな茎は生えてこず、残った根は土中で枯れて分解され、土壌を柔らかく保てます。

3-2.花がら、枝葉:不要な部分に見切りをつける

庭を美しく保つ為には、不要なものは切り捨てることも大事。未練がましく残しておくと、周りに悪影響を及ぼすこともあるので、注意が必要です。

花がら摘み:種を作らせない!

ヒオウギの花がらと膨らみ始めた実

ヒオウギの花がらと膨らみ始めた実

種を付けはじめると、植物は種を実らせることにエネルギーを費やす為、花が付きにくくなります。
その為、花を長く楽しむためには、開花後にしぼんできた花は小まめにカットして、種を作らせないようにする必要があります。
本来の植物の目的は、子孫(種)を残すことなので、それを疎外するのは少し申し訳なくもありますが…

剪定:外芽のすぐ上でカットする!

庭苑のスタッフが本格的な剪定をすることはほとんどありませんが、
・枝が通路を塞いでいる
・過剰に繁って見た目が悪くなっている
・傷み(変色や病害虫など)が出ている
といった場合には、日常の手入れのなかで多少の剪定が必要になります。

とはいえ、素人ゆえに
「本当にカットして大丈夫?切り口から傷まない?」
と心配になったりもするのですが、久保田講師曰く
「意外と植物は強い。
まして傷んでいるところは放っておいても植物が自分で排除する為に切り離そうとするので、先んじて人間が切ってしまったほうが早い。遠慮なく切って良い。」
とのこと(※もちろん不適切なカットで植物が弱る可能性はあります)。

カットする時の注意点としては 枝を切る際は外芽のすぐ上でカットする のがポイントなのだとか。

外芽と内芽とカットする位置植物には根や茎などの随所に成長点(芽)があり、成長点の上で切ると、生長点から新しい茎や葉が伸びてきます。
反対に、芽のない部分で切ると新しい枝が出ず、短くした枝は伸びない無駄な枝になってしまいます。

また、芽の向きによって「内芽」「外芽」と分けられ、外芽の上でカットしたほうが樹形が整いやすいのだそう。

これまた素人には難しいですが、ちょっと意識するだけでもきっと違う、、、はず。

一年草が終わる時

一年草は、基本的に一度「開花→種をつける」のサイクルを経ると枯れます。
花がら摘みを頑張って長持ちさせても、季節の移ろいで気温の変化に耐えられず、腐ってくる場合も…
腐り始めた場合は、周りの植物にも雑菌が及んでしまう可能性があるので、早めに抜いてしまうのが良いそうです。

シーズンオフの時

常緑樹など寒さに耐えられる草木であっても、冬場に葉や茎が寒さ焼けを起こしてしまうことがあります。
一度変色した部分は元に戻ることはないので、ダメージを受けた部分、あるいは茎の根本などから切ってしまう方が良いそうです。
見た目を整えるだけではなく、カットすることで下から新しいのが出てくるのを促すことにもなるそう。

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4.お参りの方も要注意!のポイント

4-1.虫!!!!!!!

園芸をするうえで避けられない害虫問題…当然、樹木葬の庭苑においても同じ問題が発生します。

毎年多くの庭苑で悩みのタネになる代表格が、コガネムシ、ケムシの類。
植栽を好き放題に貪って穴だらけにしてしまい、墓石や通路に糞を落としていくのは美観的に許しがたいもの。

植栽を守る為に、虫が好むような過湿状態にならないように潅水の調整をしたり、虫対策の薬剤などで対策をしています。
薬剤を通常使用している限りは人体には大きな影響はないようですが、庭苑の草木に可食の実が成っていても、くれぐれも食べないようにしてください。

毒針毛を持つケムシには近づかない!

チャドクガ、イラガ(ともに写真掲載は自粛)などの持つ毒針毛は、皮膚に付くと痛みやかゆみを伴う湿疹が出ます。

ケムシ本体のみを退治しても、周囲に飛び散った毒針で被害が出る可能性があり、駆除の際は周囲の葉ごと袋で包んでカットする等の慎重な対策が必要です。
すべてのケムシが毒を持つわけではありませんが、もし庭苑でケムシを見つけたら、念の為に近づかないようにしてください。

毒を持つケムシに触れてしまった場合の対処法

①セロハンテープなどの粘着テープで周辺をそっと押さえて、毒針毛を取り去ります。
※かゆみのある部分を掻くと、チャドクガに直接触れなかった部分にも被害が拡大します。
②出来るだけ毒針毛を取り除いたあと、強い流水やシャワーで上から洗い流します。

毒針毛に触れた直後からかゆみが出はじめ、長いと2~3週間症状が続きます。
必要に応じて、抗ヒスタミン軟膏、抗ヒスタミン含有のステロイド軟膏などを使用し、症状が強い場合は皮膚科を受診してください。

4-2.意外と多い!? 毒のある草花

ヒガンバナやスイセンが毒を持つのは比較的知られていますが、それ以外にも、毒を持つ身近に馴染んだ花は意外と多くあります。
ごく一部の例として、次のようなものがあります。

【クリスマスローズ】
有毒部位:全体。とくに根、茎は毒性が強い。
症状:めまい・腹痛・吐き気・下痢

【スズラン】
有毒部位:全体。特に根・花。
症状:嘔吐や頭痛、めまい、血圧低下、心臓麻痺など

【アジサイ】
有毒部位:葉、茎、花
症状:嘔吐や痙攣、めまい、顔面の紅潮、歩行のふらつき、呼吸麻痺、昏睡
※アジサイの毒については未解明な部分が多く、固体や種類によって毒を持つものと持たないものがあるとされています。

毒を持つスイセンとアジサイ

毒を持つ身近な花

 

上記に挙げたのものは経口摂取した場合に出る毒性ですので、お参りのうえでは問題ないでしょう。
ただし、ペットさんと一緒にお参りに来られる場合には注意が必要です。
必ずキャリーバッグに入れ、ペットさんが植物を齧らないようにしてください。

(庭苑によっては、キャリーバッグに入れていてもペットと一緒のお参りをご遠慮いただいている場合があります。ご利用の庭苑のスタッフまたはお寺に事前にご確認ください。)

また、これら以外にも、白い液の出る草花は基本的に毒性のあるアルカロイドを含有しています(ブルースター、ユーフォルビアなど)。
通常のお参りの範疇では危険はありませんが、白い液が肌に触れるとかぶれたり、液が付いた手で目を擦ったりすると、最悪失明する可能性も皆無ではありません。
植栽を無闇に手折ったりしないようにお願いいたします。

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5.アンカレッジの樹木葬は、生きた温もりを感じられるお墓である

日々の手入れのなかで、「植物は生き物、思い通りに咲き育ってはくれない」というのをつくづく感じます。
だからこそ、順調に葉がつき花が咲く様子を見守れることはスタッフとしても嬉しく、その草花をお参りの方が愛でてくださることが喜ばしく、また励みにもなります。
(場合によっては草花を枯らしてしまうこともありますが、それも温かく見守っていただければ…)

庭作りは一日にしてならず、日々の地道な手入れによって美しさを増していきます。
季節ごとの変化、年を経るごとの変化に加え、心を込めて作られるからこその温かみのある空間を楽しんでいただければ幸いです。

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